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医療法人 誠志会 砥部病院

砥部病院
〒791-2114
愛媛県伊予郡砥部町麻生40-1
TEL:089-957-5511
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令和5年

2023/02/27

 令和5年1月23日、340年続く、土居家の16代目の惣領、土居清志君が、逝去されました。ご遺族が、家族葬を希望されましたので、私が砥部病院を代表してお別れの言葉を土居君の遺影の前で読ませていただきました。

                     お別れの言葉
 土居君、長い間、ありがとうございました。土居君に砥部病院に来ていただいたのは、平成16年11月1日、中城純子おばさんの紹介だったと思います。
 土居君には病院事務の一端を担っていただきました。介護保険の主治医意見書の取りまとめ、病棟で使う消耗品の仕入れから管理、コンピュータのトラブル解決など、多種多様な場面で大活躍していただきました。私も個人的に、大変お世話になりました。また、当院の徳本福子総師長に、これほど可愛がられた人を他に知りません。
 土居君は高島屋の北海道展が大好きで、いつも開催されると同時に行って、いろいろなおいしいものを買って、病院のみんなに差し入れをしてくださいました。
 平成24年8月25日お父様(土居義昌さん)の最期を砥部病院で土居君と一緒に看取りましたね。その数年後、痰に血液が混じるとのことで、外来を受診、胸部CTで、多発する腫瘤が見つかり、前立腺癌のマーカーPSAが上昇しているため、がんセンター橋根先生の所に行ってもらいました。そこで、前立腺がんと診断されました。
 以後、土居君は抗がん剤の投与を受けながら、砥部病院で働き続けました。死の恐怖があったにもかかわらず、しっかりと笑顔で、時には周りの人に、差し入れをしながら、平気で、元気に働き続けていただきました。
 骨転移が生じて、足や腰が痛かったことでしょうが、ゆっくりと歩きながら、淡々と仕事をこなされていましたね。
 昨年2月、脳に転移していることが判明し、以後、入退院を繰り返すようになりました。6月には退院して、近所の散歩もしていましたね。自宅療養中は、行きつけの喫茶店モアに行って楽しそうでした。7月には甥子さんの結婚式に出席することができました。外来でも嬉しそうに話してくれました。今日のこの写真はその時のものですね。
 8月には前立腺がんの脊椎転移が見つかり、がんセンターに入院、痛みに対して放射線治療を行なった後、砥部病院に入院しました。10月14日、介護付有料老人ホームTo-be(トゥービー)に移りました。この時は、抗がん剤治療に意欲満々でした。
 昨年末、12月1日、土居君に明浜の施設に入居しているお母さんに会ってもらおうと、三上施設長、岡田瞬くん、岡田雅子さんの三人がかりで連れて行ってもらいましたね。お母さんと、スマホのこととか、いろいろな、普通の会話ができて、本当に良かったですね。帰りに、どんぶり館に寄って、土居君が卵とじジャコ天丼を、前のめりになって、美味しそうに食べている写真を見せてもらいました。
 介護付有料老人ホームTo-beでの生活は、快適だったそうですね。大きなテレビを置いて、職員と一緒にロールプレイングゲームをしたり、撮りためたビデオを見たりして、安楽に過ごされていました。
 12月12日から、発熱があり、炎症反応も高く、胆管炎、肺炎の併発を考え、砥部病院に入院していただきました。
 お母さんに会いに行けたのは、本当にギリギリの所だったと、今になって思います。
 熱が下がった途端に、介護付有料老人ホームTo-beに帰りたいと何度も訴えをしていました。よっぽど、To-be(トゥービー)が快適だったのだと思います。
 砥部病院でも、北海道展のお返しにと、同僚たちが差し入れてくれた、マクドナルドのハンバーガーやコーラを飲みながら過ごしていましたね。
 肺炎を併発して、低酸素となっても、「息苦しくありません、痛くもないです」と言い、最後の日の朝も、穏やかな表情で、私が「痛くない?苦しくない?」と聞くと、頷いていたのに、夕方から最後の呼吸になってしまいました。弟さんの内田昌彦さんに来ていただき、寂しくない、静かな最期を一緒に過ごしていただきました。1月23日午後7時29分土居君は旅立って逝かれました。
 今、思い返してみると、土居君の、この数年間、前立腺がんと戦いながらの生きざまは、正岡子規の悟りの世界そのものだったと思います。
 病床六尺に「余は今まで禅宗のいわゆる悟りという事を誤解していた。悟りという事は如何なる場合にも平気で死ぬる事かと思っていたのは間違いで、悟りという事は如何なる場合にも平気で生きている事であった」とあります。
 正岡子規は肺結核、脊椎カリエスの痛みと共に生き、土居君は、前立腺がんの肺転移、骨転移、脊椎転移、脳転移、と共に生きました。痛かったでしょうし、苦しかったでしょうし、辛かったでしょうし、悔しかったでしょう。しかし、土居君は平気で生き、最後まで仕事をされてこられました。その生きざまは、本当に立派でした。
 心の底から土居君に敬意を表し、感謝と哀悼の誠をささげ、お別れの言葉とさせていただきます。どうか土居君、安らかにお眠りください。長い間、ありがとうございました。
 
 令和5年2月24日

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