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医療法人 誠志会 砥部病院

砥部病院
〒791-2114
愛媛県伊予郡砥部町麻生40-1
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令和2年

2020/07/22
令和2年No.6

 学生時代、たった2週間の産婦人科実習でしたが、私はこの間ずっと大学病院の大広間に泊まり込み、4回のお産に立ち会うことができました。
 クリスマスイブの日、産婦人科の先生と、近くの居酒屋で飲んでいたところ、お産が始まるとの報せがありました。分娩室に行くと、妊婦さんがウンウン苦しそうに唸っています。私は妊婦さんの手を握り、ずっと横に座り寄り添っていました。
 「オギャー」という声とともに、大きな男の子が生まれてきました。看護師さんはすぐにその赤ちゃんをお母さんに抱かせます。お母さんの腕の中でスヤスヤと眠る赤ちゃん。今まで苦しそうに唸っていた顔が、母親の表情に変わる瞬間でした。髪は乱れ、お化粧も無く、唇は乾き、瞼は少し腫れぼったくなっていましたが、女性の生涯で一番美しい表情だと感じました。何度立ち会っても、お産は感動的で涙が出ました。
 ご主人は分娩室の外で電話帳をめくっています。「誰かお探しですか」と聞くと、オロオロした表情で、「赤ちゃんに付ける名前を探しています」と言われました。
 私の長男の出産はアメリカでした。朝の4時頃から陣痛が始まり、生まれたのは夕方の5時。胎児の心音が聞こえなくなり、産道に見えている長男の頭にネジ釘のようなものを突き刺した時、私は声をあげそうになりました。翌朝、小児科医が診察に来て、たった5分で、請求額が600ドル(6万円)、また声をあげそうになりました。
 次男は松山市民病院で生まれました。お産の感動的な場面をカセットテープに録音してくれていたのですが、先生が看護師さんに「馬乗りになって腹を押せ」と叫び、その直後、「のけ。わしが乗る」そして妻の「ぎゃー」という声が入ったものとなりました。
 三男は西条中央病院で生まれました。3人目だから安産であろうと、産婦人科の先生は高をくくっていました。ところが、なかなかの難産で、吸引分娩となり、長い頭の赤ちゃんとなって生まれてきました。
 我が子のお産は、感動よりも無事に生まれてきてくれたという安堵感だけでした。
 お産は人生の一大事と言われています。私が生まれた時も、母は大変苦しい思いをしたことでしょう。父は分娩室の外で、オロオロしていたに違いありません。
 今日は、私の誕生日です。腹を痛めて産んでくれた母と、オロオロしていた父に感謝を捧げる日です。職員の皆さんもそうしてくださいね。お父さんお母さんを大切に。
  諸人(もろびと)よ 思い知れかし 己が身の 誕生の日は 母苦難の日
 本当に、この歌の通りだと思う今日この頃です。

 令和2年6月24日

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