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医療法人 誠志会 砥部病院

砥部病院
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名誉院長の麻生だより

2017/07/28
平成29年 No.7

 誰の人生にも、まさかの時がやってきます。妻の総胆管結石再発は、私にとってまさかの出来事でした。しかし、再発したら必ず、その原因である胆のうを摘出してもらおうと心に決めていましたので、私はブレることなく、妻に手術を受けさせることができました。

 NHKドラマ「毛利元就」に今も心に残る場面があります。
 毛利元就が、宮島に陣を張る陶晴賢(すえはるかた)の大軍に奇襲を仕掛けようとした時のことです。「殿、嵐の中、船を出すことは危険でございます。船が沈みます」と村上水軍の大将に反対された毛利元就は次のように檄(げき)を飛ばします。
 「人間には三つの坂がある。上り坂と下り坂、そしていま一つは『魔坂』という坂じゃ。この『まさか』の時の人の動きが、人を上り坂に押し上げるか、下り坂に突き落とすかを握っておるのじゃ。今、陶(すえ)にとっても、この毛利にとっても、その『まさか』の時じゃ。この嵐の中で、『まさか』攻めてはこないだろうと思う陶と、『まさか』を突くこの毛利。皆々の心配はもっともじゃ。なれどなあ、何も初めから船が沈むと決めてかかることはないのじゃ。先々起こるやも知れぬ不幸ばかりを考えておっては、そのことの方が不幸じゃ。この嵐ならば、陶も恐らく油断しておろう。我らはそこを突くのじゃ」暴風雨の中、暗闇に紛れて毛利軍は船を出して奇襲をかけ、たった4千の兵力で2万の陶晴賢の大軍を打ち破ったのです。
 歴代総理の指南役、安岡正篤は、人生の三つの坂の心構えを次のように言っています。上り坂では「得意澹然(とくいたんぜん)」。澹というのは水がゆったりと動くさまをいい、得意絶頂の時こそ静かであっさりしていることが大切。下り坂では「失意泰然(しついたいぜん)」。失意の時こそ泰然と構え、大所高所から眺めてみる。そうすると、今まで見えなかったものが見えるようになり、窮地を脱することができる。まさかの坂では「有事斬然(ゆうじざんぜん)」。いったん事が起こればグズグズしないで一気呵成(かせい)にやる。

 入院時、「特別室と個室では、お食事が違うんじゃないの」と心配する総胆管結石の妻に「どうせ、お前は絶食じゃー」と私は叫んでしまいました。
 「得意澹然」「失意泰然」「有事斬然」「妻天然」を再確認することのできた一ヶ月でした。

 平成29年7月24日

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